結城・小倉が保存する結城紬に関する資料の一部を随時、公開していこうと思います。 これらは、「本場結城紬 郷土館」におきまして、展示・公開もしておりますが、貴重な結城紬の歩みの資料となっているため、たいへん古く、痛みのひどいもものもあります。そのため、それらの状況を考慮し、お見せできないく残念に思っておりました。 このHPを開設するにあたり、それらの資料を公開できることとなりました。 これらの資料をご覧いただき、結城紬の新たな一面を感じていただけたらと思います。
きーっ、ちゃきちゃき、とんとん きーっ、ちゃきちゃき、とんとん おさと、杼で、どこまでも、同じ音譜をくりかえしていく。 えつ子は、 (いったいおかあさんは、何度あの音譜をくりかえして、一反のつむぎを織り上げるのだろうか。) ふと、こんなことを考えた。そして、暗算してみた。 一寸でぬき糸八十本。つまり、おかあさんは、一反のつむぎを織るのに、 きーっ、ちゃきちゃき、とんとんを、二万五千二百回くりかえすわけだ。 (中略) |
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えつ子は、まきかけのくだをまくと、また、新しくからくだをつむにさして、 「おかあさん、あたし、いいことを考えてたの。ほら、モーターで動く機械ね。 あれを、うちで買うのよ。そしたら、おかあさんは、ただ、そばにいて、切れた糸をつなぐだ け。とてもらくちんでいいじゃないの。」 「だけど、えっちゃん、それには、どっさりお金がかかるわ。 ・・・それに、なにより困ったことには、機械を使って、らくちんな織り方をすると、 <結城つむぎ>とはいえないのよ。 これはやっぱし、昔どうりに、この古いはたでおるところにねうちがあるのね。」 |